今回のテーマは『生きる気力を失ってしまったお母さんを救うために娘さんが覚悟の断捨離をする」お話です。
生活空間にはお寺関係のものと日用品が混在して堆積してしまい
常に物を探している状態。
もともとキレイ好きだったお母さんに何があったのか。
心が病むと好きだった片付けもできなくなってしまい、モノがどんどん溢れ出してしまうんですね。
どこから手をつけていいか分からなくなった娘さんやお母さんに、やましたさんはどんなアドバイスをされるのでしょうか?
娘さんの優しさと、お母さんの心と行動の移り変わりを是非味わってみてください。
「ウチ、断捨離しました」実家・お寺の断捨離
「ウチ、断捨離しました」足の踏み場もない実家の状況
第44回目は、大阪府・泉佐野市でご主人と4人の子どもを育てているレイコさん。
物が溢れた実家で、家事をする気力を失ってしまい
元気がない母親(たつ子さん72歳)を救いたいとやましたさんにSOS。
玄関に入ったところからモノが山積みになっています。
また、家の中に入ると床には沢山のものが置いてあり足の踏み場も無いほどすごいことになってます。
寝室を見ても、山積みの物をどけないと布団を敷くこともできない感じです。
二階の廊下にもモノが積み上がっています。
お寺で使う衣装や小物がしまってある衣装部屋でもタンスまでたどり着けないほど床にモノが置いてあります。
何があるか分からなくなるほどこの部屋は放置されている感じです。
レイコさんは14年前に結婚してこの家をでました。独身時代に使っていた部屋もすでに物置になっていました。
レイコさんのご実家は由緒あるお寺。
家は近代的な2階建ての4LDKで住職のお父さんとお母さんとレイコさんの弟さんの3人暮らし。
でもお坊さんの弟さんは出張が多くなかなか家には帰ってきません。
レイコさんは
「以前はこんな状態ではなく、昔は母は掃除が好きだと思っていました。
家のこと全般好きで梅干し着けるとか歳時記的なこととか家の中の仕事は義務じゃなくて多分好きでやっていたと思います。」
とこんな風にお母さんのことを言っていました。
しかし5年ほど前に体調を崩してから家事があまりできなくなり、家の中にものが積み上げられるようになったのだとか。
お母さんの仕事は住職のお父さんを支えてお寺を守ること。
お寺の暮らしだからこそ増えてしまったものもありました。例えば大量のラップ類。御供養でラップをたくさん頂いたようで、棚の中はラップ収納庫みたいになっています。
「全部大事なものだし腐るモノではないし、いつかは使える。」とお母さん。
檀家さんからもらった生活用品もあります。
多いのはわかっていても捨てられない。
お寺で使う文房具の予備もたくさんあります。お寺の仕事に支障がないように何でも用意しておく習慣があるようです。
お母さんはもともとこの寺の長女として生まれました。45年前、お父さんと27歳で結婚し、実家の寺を継いでもらいました。
檀家さんは駅から坂道を登ってここまできてくれているのに誰も居なかったら申し訳ないから「私の都合で寺を留守にするわけにはいかない。」と話します。
お母さんはお父さんが住職になってからは旅行に出かけることもなくお寺とともに生きてきたんですね。
「ウチ、断捨離しました」やましたさんがレイコさんちにやってきた!
レイコさんとお母さん、お父さんと挨拶を交わすと、
お母さんに今この家にいてどんな気分かを尋ねました。
「前より狭くなった気がします。」
やましたさんがこちらの家の中を把握し、助けてもらえそうとホッとされたのか、レイコさんは
「どこから変えたらいいか全然わからない」と涙ながらに言いました。
「わからないよねー。」と優しく娘さんの気持ちに沿うやましたさん。
正直、私でもどこから手をつければいいか全く分からない感じです。もし実家がこんな状況だったら、と思わず考えてしまいました。
やましたさんがまず目をつけたのが、食器棚の上の大量の箱。
地震の時に落ちてきたら危ない、ということで最初に取りかかりました。
全部下ろしてみたら15個もあります。
でもこれを除いた後、遠くから見ると
そこの空間だけでもスッキリ! ご家族一同感動します。
お母さんは「嬉しい!」と笑顔になりました。
中身を点検していくとまず「タジン鍋」が出てきました。
レイコさん「これどうする?」
お母さん「置いとかなきゃしょうがない。」
やましたさん「それじゃあアウト!
使えるものだけ残したら全部になってしまう。」
15個の箱を全部開けた結果、お母さんは「全て使う」と決断しました。
それならば置く場所を考えないと・・・。
そこでキッチンの棚の中身を断捨離します。
わずか2段の棚に大量の鍋やフライパンが50個位出てきました。
やましたさんが「お母さんどれがいる?」と聞くとお母さんはレイコさんの顔を見ました。
でもやましたさんは「ここはお母さんの台所でお母さんの物だからお母さんが選んでくださいね。」と優しくアドバイス。
選び始めると、お母さんが「これはビニール袋に入れて取っておこう」
すかさずやましたさん「ダメ! 段ボールがビニール袋に変わっただけになるので量が減りません」と諭します。
圧力鍋をしばらく見て、自分が使えるかどうかを考えた後、さよならすることに。
次に出てきたのが2つの卵焼き器。どちらを使うだろう?と再びレイコさんの顔を見ます。
お母さんが「どちらかしか使っちゃいけないのよね?」とやましたさんに確認すると
「お母さんが両方使うなら両方置いておいてもいいんですよ。」
お母さんは常に人の顔色を見るところがあるようです。なかなか一人で決断できません。
「自分で決めてない、ということが分かったでしょう?」とやましたさん。
お母さん「ちょっと置いときます、っていうのはいけないの?」
やましたさん「お母さん、私に聞くんじゃなくて自分に聞くの。」
時間はかかりましたが、半分くらい断捨離できました。
空いたスペースに先ほどの食器棚の上の鍋類を置くことができました。
これだけをやった後で、お母さんの顔が急に明るくなったんです!
「すごくスッキリしました。いる物といらない物の区別がもうちょっと早くにできれば良かった。
いらないもの がいっぱい増えていく、というのはこの歳になって改めて考え直さなければいけないと思いました。ホントにびっくりしました。」
とお母さんは笑顔で話されました。
「ウチ、断捨離しました」3日後の断捨離 前途多難
3日後、レイコさんはご主人と共にお母さんのお手伝いにやってきました。和やかな空気が一変したのは来てすぐのことでした。
「これどっから来たの?」とレイコさんはガス釜を発見。どうやらお寺で使わなくなったガス釜を家に持ってきて倉庫代わりにしていたようです。
しかしお母さんの台所にはガスがなく、IHなので使えません。結局お寺に戻すことになりました。
気を取り直して食器棚の断捨離を開始。
レイコさんのご主人が力仕事を引き受けます。食器棚の中身を全部出して、
お母さんにいるいらないの判断をしてもらいます。
ホワイトボード消し4こに張り替え布20枚が出てきました。お寺で使う文房具の予備です。
次に出てきたのが大量の虫除け。「虫除けある?」と言われるから言われたら出せるように買い置きしておいたものだそうで、なんと18本!!!
お寺で使わなくなった食器も大量に保管されていました。お皿は一部ここで使い、残りは寺に戻すことにしました。
この家で育ったお母さんにとってみれば、お寺のものを自宅で保管するのは当たり前のこと。
でもそれではいつまで経っても家の中は片付かない。
これからはお寺のものはお寺に戻し、要らないモノはお寺の事務の方に処分を任せることにしました。
食器棚に詰まっていたのはお寺のものばかり。それをなくせばすっかり余裕ができました。
しかしその一方で時折寂しそうな横顔をお母さんは見せるようになっていったんです。
「ウチ、断捨離しました」断捨離11日目 お母さんの心の中
断捨離11日目、この日も育児の合間を縫ってレイコさんが手伝いにきました。
今日はキッチンの細々したものに手をつけます。
引き出しの中はお箸などのカトラリーが山盛り。お正月の前に家族のお箸を買い揃えるのが趣味だったとか。
これはお父さんが買ってくれたから・・・。カニ用の道具を見ると「お父さんはカニが好きだから」と常々お父さんを気遣う言葉がよく聞こえてきます。
お寺の世界では住職を立てるのが当然のしきたり。
実家の寺を継いで盛り立ててくれていることにも感謝しています。
しかしお母さんの中にはお父さんに対する別の感情が渦巻いていました。
「もうここのお寺には私の存在価値がないんじゃないか。」
「ウチ、断捨離しました」2週間後 母を追い詰めた言葉の真実
2週間後 スタッフの知らないところで問題は起きていました。
ようやく出てきたのは1時間後のことでした。
もともとキレイ好きだったお母さん。
なぜ5年前から家の中が荒れたのでしょうか。
当時スタッフはお母さんの年齢や体調だと思っていました。
レイコさんが打ち明けてくれたのは、
若い頃お母さんは企業に勤めて経理を担当。その経験を生かし、寺の金庫版として働いてきました。
住職のお父さんを懸命に支えお寺を守ることが生きがいでした。
しかし5年前、寺の仕事が立て込んでいた時、心身共に疲れていたお母さんをお父さんが気遣った一言だったんです。
でもお母さんにはそれがひどくショックでした。
お母さん「自分は古い人間だから何か改めないといけないのかなぁ、と思ってた時に『掃除と洗濯してワシのご飯の用意をしてたらそれでええ。』と言われたんです。
『そんなんでいいやったらそれでいい。』と思いました。
もうここのお寺には自分の存在価値はないんじゃないかな、というのが一番でした。すごい辛かった。」
ずっと二人三脚でやってきたお父さんにそんなことを言われたのがショックだったのです。
自分の存在価値を失った悲しみに体の不調が相まって家の片付けが追いつかなくなっていきました。
そして今もお母さんの中では住職の夫を尊敬する気持ちと当時の恨みの気持ちが入り混じっているのです。
お母さんをいたわるつもりで、無理させちゃいけない、と思って発したお父さんの言葉が、実はお母さんを傷つける言葉になってたなんて・・・ ちょっとショック・・・
「ウチ、断捨離しました」3週間後の断捨離 お母さんに変化が!!
3週間後(お母さんとお父さんがぶつかった1週間後)レイコさんはお母さんを励まそうと4人の子供(13歳の長男、11歳の長女、4歳の次男、2歳の三男)を連れてお手伝い。
子供たちには床下収納(賞味期限の切れた食料などを)の断捨離を任せることにしました。
レイコさんはお母さんのハンカチやタオルを断捨離。
すごい数です!!
1回使って捨てようと思ってもまた洗ったらしまってしまう、の繰り返し。
法事のお礼にもらうハンカチやタオル。そういうものは捨てないのがお母さんの流儀。
お母さん、これまでとは打って変わって即断即決!
レイコさんの顔色を伺うことなく自分で決めていきます。
ついにはゴミ箱に山盛りになってしまいました。
お母さんのこの姿にはレイコさんも内心驚いていた様子がレイコさんの断捨離ノートに。。。
「ウチ、断捨離しました」お母さんが吹っ切れた! 昔のお母さんに戻った!
お母さん「(お父さんが)迷惑かけてきたようなことを反省しはったみたい。『迷惑かけてたんやなぁ』ということだけは一回言うてくれはりました。初めてです。」
平泉さん「お父さんが謝ってくれた。まるで若い頃に戻ったような生き生きとした表情はお父さんと仲直りした証だったんだねー。」
お母さん、よかったですね〜!
お勤めから帰ってきたお父さんも断捨離に参戦。
「お父さんは正直で裏表がない人。時々地雷は踏むけれどそれはお父さんの正直なところ。母を傷つけたい、と思って言うことはないです。」とレイコさん。
平泉さん「この雪解けを誰よりも喜んでいるのはレイコさんに違いない。
この1ヶ月、断捨離はあまり進みませんでした。でもお母さんの心に長年溜まっていたわだかまりは気持ちよく断捨離できたみたいです。」
「ウチ、断捨離しました」約1ヶ月後 やましたさんが再びやってきた
「この辺のものが消えたいったみたいで嬉しい。」とお母さん。
やましたさん「でもガラスの中(食器棚の中)ピカピカに光っているよ。でもやました基準で見るとまだ多いなぁ。でも前回来た時のことを思うと格段に進化している。
飾り物と日用品のストックが混在している。ゾーン(範囲)を分けるといいかな。でもこれからでいい。まだまだ続けたいと思ったでしょ?
あとひと頑張りですね。お母さんが快適に寝られるようにto be continueですね。」
寝室はまだまだものが多いけど、衣装ケース3つ分がなくなり、仕事道具もだいぶ整理されたようです。
この家の断捨離はまだ始まったばかりですが
最後に保存容器の断捨離にチャレンジしてもらいました。
するとお母さん、要らない容器をどんどん処分。
「そんなに捨てて大丈夫ですか?」とスタッフ。
すかさず「そんな意地悪言わないの。」とやましたさん。
冗談を言って心から笑える日がやってきました。
「ウチ、断捨離しました」番組の最後に・・・
平泉さん「5年前にお父さんに言われた一言が引きずっていたとは驚いたなぁ。」
やましたさん「自己効力感というのは「自分は何かの役に立っている存在」は大事な心の栄養。
それがなくなったことで何もする気力がなくなっていった。
それを心配しながらお母さんに寄り添いながら、どれだけ大変だったかよく辛抱して辛抱し続けたレイコさんに感動し頭が下がりました。」
あれからお母さんは昔を思い出したようにお寺やお父さんの手伝いに動き回っています。
とはいえ、お母さんは72歳、無理していないかと心配した番組ディレクターが「お寺のことするの大変ですか?」とお母さんに質問すると
「私が生まれたところだから当たり前というか普通のように思います。ですから大変とか嫌やとか思ったことはさらさらないです。」
お寺とともに生きる。お母さんの人生は再び輝き出しています。
いやぁ、ステキな結末で良かった〜!! お母さん、めちゃくちゃ嬉しそう。片付けられないのは気の病だったんですね。
言葉ってホントに大事ですね。言葉づかいの大切さを改めて考えさせられる番組でした。
やましたさんのプロフィールはこちら⬇︎
やましたひでこさん プロフィール
一般財団法人「断捨離®︎」代表
学生時代に出逢ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常の「片づけ」に落とし込み応用提唱。誰もが実践可能な「自己探訪メソッド」を構築。断捨離は人生を有機的に機能させる「行動哲学」と位置づけ、空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動を促すその提案は、年齢、性別、職業を問わず圧倒的な支持を得ている。
『断捨離』をはじめとするシリーズ書籍は、国内外累計500万部を超えるミリオンセラー。アジア各国、ヨーロッパ各国において20言語以上に翻訳されている。
※「断捨離」はやましたひでこ個人の登録商標であり、無断商業利用はできません。
現在、BS朝日「ウチ、断捨離しました!」
<毎週月曜夜8時>レギュラー出演中。
https://www.bs-asahi.co.jp/danshari/
(Amebaオフィシャルブログより引用)